2014年7月20日日曜日

7月18日の悲劇、一人のウクライナ人として思ったこと

(7月18日早朝、フェイスブックに投稿した内容を転載)


夜中に電話が鳴る。
「この時間帯ですみません! あのね、マレーシアの飛行機がウクライナだかロシアだかで見つかって、今からロシア語のニュース翻訳で注文が来たんですけど…」

「見つかって」というから、この前消えた飛行機のことかと寝ぼけながら思い、更にはロシア語なら私でなくても見つかるだろうと断るが、ニュースを開くと一瞬にして頭が冴える。

295人を乗せたアムステルダムからクアラルンプルに向かうマレーシア飛行機がウクライナ東部で撃墜。
原因については情報が錯綜しており、現時点の情報では親ロシア武装勢力か、ロシア領土はら発射されたロケットミサイルかと言われている。
少し前までは親ロシア勢力が「く○ウクの飛行機落してやったぜ」とネットじゅうに喜んでいたのを、マレーシアの飛行機だったことが分かって焦ってその投稿を消しているみたい。
とはいえ、ウクライナ側の誤発射の可能性も捨てきれない。最近はどんな情報も信頼できないのだ。どうかそうではありませんように……

怖かっただろうな
怖かっただろうな
関係なかったのに
旅行だったのかな
ビジネスだったのかな
帰省だったのかな

自然現象とか、機械故障とかはある意味で仕方がないけど
人の手で
人の手で
人の悪意で
人が死ぬなど
ありえない

そして
この期に及んで
「ウクライナだかロシアだか」と
言える神経がわからない。

いい加減覚えておいてください
ウクライナとロシアは別物

23年前に独立した事実を覚えられないなら
今回の出来事で覚えていただきたい

今度
「ロシア人のオリガです」と言われたり
「ロシアはどうですか?」と聞かれたりしたら
思いっきりキレさせていただくので、そのつもりで。

「ウクライナで飛行機が落ちたニュースを見て
オリガのことを思い出した」とメールが来る

ありがたいと言いたいところだが、どうしても思ってしまう。

今までの半年間は思い出せなかったのだろうか。

「ハマスのテロリストが自国民を人の盾にして最低」と
イスラエルのために祈ろう支えよう正しいことを知ろうと積極的な

親ロシアテロリストだってロシアに操られて
ウクライナでまったく同じことしているのだけど
覚えてくれただろうか。
ウクライナはイスラエルじゃないもんな。
悔しがるところではないだろうけど、悔しくて仕方がない。
はい。
一刻も早くイスラエルに平和が訪れますように。

「内戦だ」「あくまでもウクライナ内部の問題だ」
「プーチンにだって考えていることがあるんだ」
「お互い悪口言い合うのではなくて建設的な対話が必要だ」
こんなのんきなことを言ったり考えたりするから
ロシアや親ロシア勢力が野放しにされてこんなことになるのでは。

怖かっただろうな
怖かっただろうな
ごめんよ
巻き込まれてほしくなかった

#MH17墜落

2014年6月30日月曜日

ウクライナ式ナショナリズムという名の都市伝説(上編)

どうも、ご無沙汰しておりますぽんずです。



日本のテレビで翻訳をさせていただくたびに、
収入は入るが毎回のように悔しい思いをする。
自分に関係のないことだったらなんとは割り切れるけれど、
自国のことなのでムキになり、制作側の方々には
相当面倒くさい通訳さんと思われているに違いない。


最近悔しかったのは、ヤツェニューク首相の名字を
読み上げるたびに噛み、そもそもウクライナで何が起きているか
あまり把握されていなかったスタッフの方が、
「親ウクライナ活動家」と出たと単に、
「あっ、ヤロシとかですか?」と噛まずに言えていたこと。


ヤロシとは、いわゆる「右派セクター」党の党首で、
プッテレで大人気の人物。
2月の政権崩壊前から、プッテレはひたすら
「右派セクター」「ヤロシ」と並べ立て、
「ロシア語を話す人を殺しにくる人たち」だとか、
(当時の)「暫定政権に逆らう者を殺害する」とか、
とにかくウクライナ人至上主義者で、
排他的で怖い組織のダークリーダ、
その癖なぜかアメリカに魂を売った人物像を
見事にでっち上げていた。

そして何よりも、ウクライナで大人気で、基本
ウクライナ語を話したりウクライナ国旗を上げたりする人は
右派セクターの一員か、思い入れしているか、だと。

2月末クリミアで発生した「プーチンさん、助けて!」集会は、
暫定政権を応援しなかったクリミアに右派セクターが復讐しに来る
というプッテレのデマに洗脳されまくり
恐怖に怯えた人たちがほとんどだったという。

東部の親ロシア武装集団も、怪しいと思った人を捕まえては、
「右派セクターだろ!」「てめぇ、右派セクめ!」と本気で罵るよう。



で。

……大統領選に出馬したヤロシの結果はなんと、0.7%。

なんと素晴らしい支持率だろう。

(とはいっても、その誓約はまともなものだった。
ナショナリスティックな内容として取れるのは
「自国愛を育む環境作り」くらいで、
人種差別大反対でロシア系の私が見ても、
「ロシアにブラックPRさえされていなければな」と思う候補だった。)


ちなみにロシアの国営放送では、選挙日の夕方
「ヤロシ――37.7%で1位」と語る映像を流している。

キャスタが「ウクライナの中央選挙管理委員会のホームページには、
ヤロシが37.7%の投票をもってリードしているとの情報が現れました」と言い、
スクリーンショットらしきものを指している、というもの。

後にウクライナ保安庁が報告したことだが、選挙管理員会のHPには
ロシア国営が流した画面の通りになるようにする
ウイルスが仕込まれていたが、発覚され
ロシア国営放送の40分ほど前に除去されていた。
除去されたことがロシアに伝わらなかったために、
第一国営放送が見事な滑りっぷりを披露。
ポロシェンコが当選したことをどう説明したのだろう。


しかし、こんなことなど、日本人の手で翻訳され
日本をその毒に染めるロシアの国営放送や「ロシアの声」などが
分析し反省するわけがない。

だから、日本にも伝わらない。

惨敗したヤロシが未だ、当たり前のように
ウクライナ内の親ウクライナ派を動かす力として把握される。


ロシアは大国。
国外に向けた情報戦術を備えているし、
戦略もし、人材も投資も惜しまずに流し込む。
在日ロシア大使館のツイッターなんて
良くできた毒吐き機で余裕をこいた嘘発信機。
感心するわ。

そうでなくとも、ロシアの「その他」としてしか
見てもらえないウクライナは、なかなかまともに
そのやわな声に耳を傾けてもらえない。

ウクライナ大使館が「ウクライナのマスコミを全く取り上げず、
反ウクライナ・プロパガンダを垂れ流すロシアの国営放送を
衛星放送するのをやめていただきたい」とN○Kにかけあったところ
断られ、「ウクライナの国営放送を取り入れるから」と断られた。
確かに何回か取り入れてくれたけど、1~4分程度のもので、
ウクライナ大使館向けの誤魔化しとも言い難い、どうでもいい部分だった。
ロシアは大国。無視はできない。
それに引き換えウクライナは…。


ちなみに在日ウクライナ大使館は、
大使を含めて正規スタッフは5名。
ウクライナはとにかくお金がないので、
人事削減で5年前に比べると半減している。
通翻訳者は1名と、大忙し。
ウェブサイトの翻訳はほとんど有志のボランティア、
最近始まったフェイスブックやツイッターは
スタッフの家族が中心となって運営。
国はなぜ後せめてもう一人、日本語ができる人を
増やしてくれないないの? と尋ねると、
「今はほんっとにお金がないの。軍隊が最優先だし、
仕方がないよ」という。

だよ。


ウクライナには今、いろんな意味で余裕がないのだ。

だから、なかなか情報戦には勝てん。
ロシアのは、マシンだから。


非常にこれは、悔しい。


…本題から離れたのと、長くなりそうなので、次回に続く。

2014年6月9日月曜日

ぽんずがロシアの「悪者さ」を疑わない理由

どうも、ぽんずです。

「よくある誤解コーナー、始めました」とか言っておいて、
早速力が尽きたのかーい!との突っ込みが
聞こえてきそうですが、はい、力が尽きました。


ウクライナ東部での状況もまた毎日のように変化を遂げ、
もはや私の「東部の事実はねぇ」が追いつくわけがない。


ときに、一つ、限られた一部の人以外が聞いたら、
「にゃーに言っちゃってんの」と思うような話をしてもいいですか?
(実際の知り合いなら既に何回か話しているかもしれないけど。)


私はクリスチャンでして。
所属はバプテストだけど、ま、聖書が言及していることに関して
全般的に興味がありまして。
異言とか癒しとか奇跡とか預言とか。


2011年の7月、当時通っていたゴスペルサークル繋がりで、
とある福島の教会にボランティアに行ったのです。
(ビックパレットふくしまにあったどでかい避難所のボランティア、
 そして「新生活スタータキット」と名付けた、必要な家電とか家具とか
 一定の金額を出して買いそろえるのを手伝う被災者への援助を、
 100以上の世帯に対してやっていた教会です。)


「ウクライナから来ました~! 20年余り住んでいる地元は
チェルノブイリから120キロほどしか離れていませんが、
この通り、元気です!」と励ますつもりで挨拶をすると、
その教会の副牧師(主牧師の奥様)が手招いているのです。


「あのね、ぽんずちゃん、変な話、わたしは震災のすぐあとに、
 神様に『ウクライナ行って来い』って言われてるね。
 今までは、ウクライナってどこね?という感じだったし、
 ウクライナどころかヨーロッパすらコネがないから、
 忙しいししばらくはいいかなって思ってたんだけど、
 ぽんずちゃんがこうやってここに来てくれたわけだから、
 こりゃ行かなきゃなって、思ったわけさ」と言うのです。



結果、その2ヵ月後にその牧師先生と妹さんを
ウクライナまでお連れしました。
キエフを渡り歩き、昔のキエフの入り口になっていた
「黄金の門」の 前で祈ったり、国会の前に祈ったりしました。

ドニエプル川が見下ろせる高いところに立ち、
「ロシアの方向はどこ?」と言うので、
それを示すと、それに向かって祈りました。
「何かねぇ、ソ連が? ソ連のほうから、危険を感じるのよ。
 ソ連がね、ウクライナが欲しいというか」と言っていました。

牧師先生が何かにつけてウクライナを「ロシア」と、
「ロシア」を「ソ連」とお呼びだったので、20年余り経っているのに、
(そして、40代半ばと、比較的若いお方なのに)「いつまで言うかな」と
若干イライラしながら「ソ連って、ロシアのことでしょうか?」と申しましたが、
「ロシア、うん、ロシアね、ソ連が」と、話が続いたのでした。



また、「海のそばにある、軍隊基地まで行けって、神様が」と言うので、
「シンフェローポリ?」「セバストーポリ?」と聞いてもピンとこなかったのですが、
「うーん、オデッサとか?」と聞くと、「そう! うん! オデッサ!」と言っていました。
なので、オデッサにも行き、 オデッサでも祈りました。

軍隊基地のそばまで行くと、壁を触って先生は、「あんたたち、
ウクライナ軍のために全然祈っていないでしょ」とおっしゃる。
「力が全然感じられません。ロシアが襲いかかったときは、
 この無力さでは歯が立たないのよ」とも言いました。

その時点で私はまだ、なぜにオデッサだったのかも理解できなかった。
クリミアにはロシアの黒海艦隊があるから、詳細は知らんけど
クリミアを欲しがっていることはなんとなく把握してはいた。
だけど、オデッサのことは聞いてないよ!と思っていたのです。

最近知ったことですが、オデッサにはかなり前から
ロシアのFSB(保安庁)が工作員を送り込み、
ひそかにいろいろ進めていたらしいのです。

オデッサ市は非常に発達しているヨーロッパ的な都市である上に、
親ロシアな沿ドニエストル共和国にも接しているので、ロシアの領地になれば
ウクライナの黒海へのアクセスが閉ざされることも含め、
とにかく唾をつけるのに大変お得な場所らしい。


それを2011年のぽんずは、まったく知らなかったので、口には出さずと
「オデッサなど、意味ないだろう」と、のんきに思っていたのでした。

それに、ロシアがウクライナに対していろいろ欲を持っているの知っていはいたけど、
まーさか襲いかかるようなことは、ヨーロッパの目の前で21世紀の今、
するわけないだろうと、内心軽く流しておりました。

「軍のために祈ってないでしょー」と言われましても、
いまどきウクライナ何かにはんなもの必要ないだろと思っていたし、
 数年にわたって軍縮小が全面的に行われていたので、
国がやっているんだからそもそも軍など形だけのものでいいだろうと、
ただ飯食べてるあいつらのためになんで祈らなならんのだと、
赦しがたい考え方しておりました。


したら、この様です。

ウクライナ軍が何一つできなかったクリミアの占拠もあり。
5月2日、オデッサの大惨事もあり。

今の東部の悲惨な状況がある。
ウクライナ軍も実際に、
つい最近までは役に立たなかった。



20世紀最大の地政学的悲劇」と
ソ連崩壊を嘆いたプーチンの野心のために、 
人が、毎日のように、死んでいる。

「ソ連」という先生の言葉まで、事実だった。



ここ3カ月、たまにテレビでプーチンやラブロフ外務相、
またプーチンTVの翻訳をさせられることがありましたけど、
彼らの自信や誠実そうな怒りに満ちた言葉を聞いていると、
ときには「ん? ここまで『何もしてないよ!』って真顔で言っているんだから、
ウクライナってもしかして、被害妄想? 本当にロシアが悪くないんじゃ?
だって、ロシアがやっているとしたら酷すぎるよ、人間が同じ人間に対して
できるわけがない! クリミアの人たちを徹底的に洗脳し、
東部に次々と武器や部隊や工作員を送り込み、
大勢のネット野次馬を雇って情報戦を繰り広げているなんて、
オッカムの剃刀原則で考えると、設定が複雑すぎるもの」と、
妙な錯覚に陥ることがありました。

彼らの言葉を信じ切っているロシア人、そして日本人までいるのだから、
ん? 間違っているのは……うちのほう? と思ったこともありました。


でも。


我が国は今、この数カ月ずっと、
全世界の目の前で、
ロシアにレイプされています。
それを、オバマおじちゃんや
メルケルおばちゃんが「何してるの!」と
注意をしようものなら、ロシアは
「何もしてないよ」
「遊んでただけだよ」
「合意のうえですよ」
「恋人同士の問題なんで、
口挟まないで」と抜かしています。


一部のクリスチャンではない人には
「変な話」でしかないので、
信じてもらえるなんて思ってませんが。

少なくとも私は、一時的な迷いはあっても、
2011年のあの数日間のことを思い出せるので、
最終的には、迷いません。




2014年5月23日金曜日

よくある誤解シリーズ、はじめました。「ウクライナ東部」について

どうも、ぽんずです。

学業との両立が難しくなったので、仕事を休んでおりましたが、
大統領選を前にやはりあちこちから以来が来るもので、
22時まで数時間仕事、そして早朝2時半からまた仕事、
その間はネット喫茶で仮眠を取ろうとしたものの、
いろいろ考えすぎて頭が冴える冴える。

22日日の早朝、ウクライナ東部で休憩中のウクライナ軍が
親ロシアの武装集団に一方的に射撃を受け、
一ヶ所だけで30人以上の死傷者が出た。
(ちゃんと防衛していなかったという話ではあるけど。)

母国で人が死ぬことにはもう慣れたかと思っていたけど、
ダメやわ。

眠れるわけがない。

それはまぁ、いいとして。

最近ウクライナ情勢を語る上で欠かせない「東部」。
この一言に、他のいろんな概念が「イコール」式で擦り付けられている。

アカデミックで客観的なデータに基づくような説明はできないけど、
最近少しはウクライナ情勢にうるさくなったウク人として、
それぞれの違いを、数回に分けて簡単に説明したいと思います。

さてさて。

【本日の訂正】 マスコミが言う「東部」は大体「ドンバス」のこと

今日本のニュースで「東部」と言われているウクライナの部分は、
厳密に言えば東部なのではなく、「ドンバス」=
ルハンシク州とドネツィク州を含む地域を言っているのがほとんど。

ウクライナ人から見るウクライナ東部は、
東寄りの5つの州ーーハリキフ、ルハンシク、ドネツィク、
ドニプロペトロウシク、ザポリージャ州からなる。

現在「独立を求めたり」「建物が占拠されたり」しているのはドンバス。
それも、一部のみ。

ハリキフもたまに危うくなるけど、ドンバスにはまったく及ばない。
それには理由があるが、これについてはまた今度。

これに関連して最近耳にした勘違いをひとつ。

「ウクライナには親ロシア派と親欧米派が半々くらいいて...」
(これは、掛かり付けの整体院の先生。)

クリミア抜きでも、ウクライナには24つの州がある。
東部だけでも、2つの州からなるドンバスは少数派。
また後で話すけど、ドンバスでも「親ロシア派」は
決して大多数を閉めているわけではない。

「せやから勝手に半々にせんといて」と、
整体院の先生に突っ込みたいところだが、
日本の報道を見ていれば、
そういう誤解をしても無理がない。

あーーぽんずはストレスやー。

次回もお楽しみに。

2014年5月17日土曜日

よくある質問: 「あなたは、ヨーロッパ派? ロシア派?」

とにかくこれはよく聞かれる。

他のウクライナ人の知り合いからも、よく聞かれると聞く。

真っ先の反応は、「ウクライナ派」、である。
ロシアもヨーロッパも、あまり関係ない。

いや、その二つの間に板挟みになっているのはわかっているのだけど。



もともとは、どっちか片方を選ばなきゃならないのかよ、って思っていた。

去年の11月に始まった反政府抗議は確かに、EU連結協定の取りやめが原因だった。
その時点でわたしは懐疑的だった。「それでよかったかもじゃん」と思って。
ただ、11月30日、数百人のデモ隊に対して、警察が許せないほどの暴力を振るった。
それ以来、EU連結はともかくとして、「国民をなめんな!」というのが抗議の主な主張となった。

そこは、未だ日本で気づいてもらえていない気がする。




個人的にいえば、少し前までのロシアは、とりわけ好きでもなかったけど、別に嫌いでもなく。

ただ、自分はロシア人ではなく、ウクライナ人である、その認識だけはあった。

(血統的に言うと、ウクライナ人の血はたぶん入っていないとは思うけど。
 半分は朝鮮系、後はロシアとかポーランドとか、オーストリアとか、
 たぶん、ユダヤ系もどこか混じっているかと。)


なんだろう……被害妄想かもしれないけど、
一部のロシア人はウクライナ人に対してものすごく上から目線なのだ。
「ウクライナなんて国じゃない、地方だ」と言ったり。
「ウクライナ語はロシア語の方言にすぎない」と言ったり。

そう言われて快く思うわけあるまい。


ただでさえ、大国の人たちには「ウクライナ人です」って言っても、
気がつくと「ロシアだと、○○とかどうなの?」と聞かれるわけで。

「そのー、ロシアじゃなくてウクライナなんですけど。」
「えっ、何が違うの?」
「……国が?」
「うーん、よくわからない。」


 いやいや、わかってくださいよ、そこは。

「えっ、ロシアとウクライナって○○が違うの?」

ロシアの日常は経験したことないから比較もできないのよ、だから。


それはまぁ、いいとして。

とにかく、できることならロシアとは一緒になりたくなかった。
別物なのだから、感覚でしか言えないけど。
最近のロシアは、ロシア正教以外の宗教に対して迫害チックになったり、
同性愛者を犯罪者扱いしたりするし。
何かと面倒くさそう。


ヨーロッパはヨーロッパで、EUに加盟したら経済的にいろいろ大変そうである。

いちいちビザを取らなくてもいろんなところ行けるようになるから
EUになるといいなとは思っていたけど、日本でぐうたらしている自分が
ウクライナに残ったみんなにその大変さを背負わせる資格ないし。

できることなら、ロシアとも程よい距離を置き、
EUにも加盟せず、地味に存続してほしかったけど。

というか、政権が崩壊しても、暫定政権は真っ先に
「ロシアとの関係は友好関係のまま保ちたい」と確言していた記憶がある。

が、自力ではロシアに歯向かえないウクライナは、
結果として超スピードでヨーロッパに向かって走っている。
ここ3カ月でヨーロッパが自由貿易ゾーンを開いてくれたり、
資金を貸してくれたりして、来年までにはビザも排除されるかもしれない。


ヨーロッパ・アメリカは別に、ウクライナがかわいくて
いろいろ協力しているわけではないことくらいはわかっとる。

ウクライナなんて、でかい田舎のような、
経済的にも武力的にも力あまりないけど絶妙な位置にあるから、
どうしても大国に振り回されてしまう。

それが避けられないのであれば、
ロシアに拘束されるくらいなら、
ヨーロッパに付いた方が、マシ。





その選択を強いられるのはすごく悔しいけど。

みんなはただ、他人に干渉されんと、
自分の土地で平和に生きたいだけなのに、ね。


2014年5月15日木曜日

管理人について

どうもです。

日本在住のウクライナ人(♀)です。

以前は、「すももんちょ」というふざけた名前で
「ウクライナから愛を込めて」というブログをしたり、
「OREO。俺男」という更にふざけた名前でミクシィをしたり、
「カングさん」と言われてゆーちゅーぶでビデオブログをしたり、
他にもいくつかあるわけですが、とにかく、
ブログを作っては放棄するような人。

もう二度とブログを始めるまい、と思っていたのですが、
最近は母国の状況を見ていると、心が痛み、
頭の中で言葉がくっつき文ができる。
それを書きたくて、指先がかゆくなる。

ここでの名前は「ぽんず」にでもしときましょうか。
(知り合いにはすぐばれると思うけど。)


ここ1カ月ほど、テレビからの映像翻訳の依頼が殺到。
本来ならウハウハで嬉しいはずだが、内容が内容なだけに、
各依頼が重く体心に応える。

ここ1カ月で、テレビの報道力にがっかりした。
いや、イメージを植え付ける力は最強だとは思う。
でも、真実を見せてくれることには全く期待しなくなった。

制作側に悪意があるわけではない(と思いたい)が、ウクライナ人のくせに、
自ら作業に加わっておきながら、これでもかと思うくらいに、無力なのだ。

日本にいるとわからないと思うけど、ロシアが長年培ってきた
プロパガンダマジックに、客観性を誇る日本のマスコミも、
まんまと引っ掛かっている気がする。


自分で材料を選んで翻訳し、発信を試みた。
しかし、労力と時間を食われる割に、伝わる範囲はわずか。
それに、状況が複雑なだけに、よっぽど興味がなければ付いて行くのは大変。


だからたぶん、今の状況を正確に掴んでいただくことは、
ほぼ不可能なんじゃないのかな。



では、何ができるのだろう。


たぶん、
自分の心の内を晒して、
ウクライナ人を、人として見てもらうことしか、
できないのかも。


今の気持ちとしては、
「悲しみ」、
国から離れていても、
いや、
離れているからこそだろうか、
毎日の隅々まで染渡っている
悲しみ」がある。


「暫定政権」「制裁措置」「親ロシア派」
「迫撃砲」「装甲車」「地対空ミサイルシステム」

こんな日本語なんて覚えなくても済むような人生を送りたかった。


朝毎「何か、恐ろしいことが起きていないか」とネットを開く毎日には疲れた。



「オデッサ、46名死亡」と見ても「46人か~、きょうは多いな」としか思えなくなった自分には呆れる。



もう一つは、ロシアに対する
心の底からどす黒い煙を立てて湧きあがる
憎しみ」がある。


まともな人が聞けば「そこまでひどい嘘などつけるわけがない」としか思えないような
嘘を、それも嫌悪に満ちた言葉に包み発信しているロシアンプロパガンダや政治家たち。
日本ではその毒々しさがほとんど見向きされない。


特集を組んでいるテレビ局でも、ロシア報道番組の言葉をそのまま訳すと
「へ~、ウクライナ暫定政府を軍事政権って言ってんだぁ」と興味を示すくらいだが、
2か月前から"junta"「軍事政権」と言われ続けることによって、東部の人たちやロシア中が
暫定政権は非合法なもので軍事政権であることを信じ込んでいる。

たった一つの言葉でこのザマよ。

他の言葉も全て偽りで溢れているのに。


訴えても「自分に不都合な言い方されているから不機嫌になっているだけだろ」と思われる。

「ぽんずのヤツ、また何かイラついてやんの。」


無力なのに、疲れた。



一番近しい友だちがロシア人で。


いろいろ理解してくれロシアをかばったりすることはめったにないけど。


今、一番人に聞いてほしい「ロシアがこんなに悪いんだ!」という話は、
相手の祖国だから、できない。

本人がやったんじゃないんだから、怒りをぶつけても仕方がないし、
万が一反論されると、関係が壊れそうで怖い。


近しい友だちとも一線を置くようになり。
平和に生きる(ように見える)人たちに囲まれて
一人だけ影を背負っている自分にも飽きた。

いやな孤独感である。


悲しみ」「憎しみ」「孤独感

これくらいは、ウクライナ情勢の詳細がわからなくても、
わかってもらえるだろうか。



伝わ~れ~……。