どうも、ご無沙汰しておりますぽんずです。
日本のテレビで翻訳をさせていただくたびに、
収入は入るが毎回のように悔しい思いをする。
自分に関係のないことだったらなんとは割り切れるけれど、
自国のことなのでムキになり、制作側の方々には
相当面倒くさい通訳さんと思われているに違いない。
最近悔しかったのは、ヤツェニューク首相の名字を
読み上げるたびに噛み、そもそもウクライナで何が起きているか
あまり把握されていなかったスタッフの方が、
「親ウクライナ活動家」と出たと単に、
「あっ、ヤロシとかですか?」と噛まずに言えていたこと。
ヤロシとは、いわゆる「右派セクター」党の党首で、
プッテレで大人気の人物。
2月の政権崩壊前から、プッテレはひたすら
「右派セクター」「ヤロシ」と並べ立て、
「ロシア語を話す人を殺しにくる人たち」だとか、
(当時の)「暫定政権に逆らう者を殺害する」とか、
とにかくウクライナ人至上主義者で、
排他的で怖い組織のダークリーダ、
その癖なぜかアメリカに魂を売った人物像を
見事にでっち上げていた。
そして何よりも、ウクライナで大人気で、基本
ウクライナ語を話したりウクライナ国旗を上げたりする人は
右派セクターの一員か、思い入れしているか、だと。
2月末クリミアで発生した「プーチンさん、助けて!」集会は、
暫定政権を応援しなかったクリミアに右派セクターが復讐しに来る
というプッテレのデマに洗脳されまくり
恐怖に怯えた人たちがほとんどだったという。
東部の親ロシア武装集団も、怪しいと思った人を捕まえては、
「右派セクターだろ!」「てめぇ、右派セクめ!」と本気で罵るよう。
で。
……大統領選に出馬したヤロシの結果はなんと、0.7%。
なんと素晴らしい支持率だろう。
(とはいっても、その誓約はまともなものだった。
ナショナリスティックな内容として取れるのは
「自国愛を育む環境作り」くらいで、
人種差別大反対でロシア系の私が見ても、
「ロシアにブラックPRさえされていなければな」と思う候補だった。)
ちなみにロシアの国営放送では、選挙日の夕方
「ヤロシ――37.7%で1位」と語る映像を流している。
キャスタが「ウクライナの中央選挙管理委員会のホームページには、
ヤロシが37.7%の投票をもってリードしているとの情報が現れました」と言い、
スクリーンショットらしきものを指している、というもの。
後にウクライナ保安庁が報告したことだが、選挙管理員会のHPには
ロシア国営が流した画面の通りになるようにする
ウイルスが仕込まれていたが、発覚され
ロシア国営放送の40分ほど前に除去されていた。
除去されたことがロシアに伝わらなかったために、
第一国営放送が見事な滑りっぷりを披露。
ポロシェンコが当選したことをどう説明したのだろう。
しかし、こんなことなど、日本人の手で翻訳され
日本をその毒に染めるロシアの国営放送や「ロシアの声」などが
分析し反省するわけがない。
だから、日本にも伝わらない。
惨敗したヤロシが未だ、当たり前のように
ウクライナ内の親ウクライナ派を動かす力として把握される。
ロシアは大国。
国外に向けた情報戦術を備えているし、
戦略もし、人材も投資も惜しまずに流し込む。
在日ロシア大使館のツイッターなんて
良くできた毒吐き機で余裕をこいた嘘発信機。
感心するわ。
そうでなくとも、ロシアの「その他」としてしか
見てもらえないウクライナは、なかなかまともに
そのやわな声に耳を傾けてもらえない。
ウクライナ大使館が「ウクライナのマスコミを全く取り上げず、
反ウクライナ・プロパガンダを垂れ流すロシアの国営放送を
衛星放送するのをやめていただきたい」とN○Kにかけあったところ
断られ、「ウクライナの国営放送を取り入れるから」と断られた。
確かに何回か取り入れてくれたけど、1~4分程度のもので、
ウクライナ大使館向けの誤魔化しとも言い難い、どうでもいい部分だった。
ロシアは大国。無視はできない。
それに引き換えウクライナは…。
ちなみに在日ウクライナ大使館は、
大使を含めて正規スタッフは5名。
ウクライナはとにかくお金がないので、
人事削減で5年前に比べると半減している。
通翻訳者は1名と、大忙し。
ウェブサイトの翻訳はほとんど有志のボランティア、
最近始まったフェイスブックやツイッターは
スタッフの家族が中心となって運営。
国はなぜ後せめてもう一人、日本語ができる人を
増やしてくれないないの? と尋ねると、
「今はほんっとにお金がないの。軍隊が最優先だし、
仕方がないよ」という。
だよ。
ウクライナには今、いろんな意味で余裕がないのだ。
だから、なかなか情報戦には勝てん。
ロシアのは、マシンだから。
非常にこれは、悔しい。
…本題から離れたのと、長くなりそうなので、次回に続く。
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