2014年5月23日金曜日

よくある誤解シリーズ、はじめました。「ウクライナ東部」について

どうも、ぽんずです。

学業との両立が難しくなったので、仕事を休んでおりましたが、
大統領選を前にやはりあちこちから以来が来るもので、
22時まで数時間仕事、そして早朝2時半からまた仕事、
その間はネット喫茶で仮眠を取ろうとしたものの、
いろいろ考えすぎて頭が冴える冴える。

22日日の早朝、ウクライナ東部で休憩中のウクライナ軍が
親ロシアの武装集団に一方的に射撃を受け、
一ヶ所だけで30人以上の死傷者が出た。
(ちゃんと防衛していなかったという話ではあるけど。)

母国で人が死ぬことにはもう慣れたかと思っていたけど、
ダメやわ。

眠れるわけがない。

それはまぁ、いいとして。

最近ウクライナ情勢を語る上で欠かせない「東部」。
この一言に、他のいろんな概念が「イコール」式で擦り付けられている。

アカデミックで客観的なデータに基づくような説明はできないけど、
最近少しはウクライナ情勢にうるさくなったウク人として、
それぞれの違いを、数回に分けて簡単に説明したいと思います。

さてさて。

【本日の訂正】 マスコミが言う「東部」は大体「ドンバス」のこと

今日本のニュースで「東部」と言われているウクライナの部分は、
厳密に言えば東部なのではなく、「ドンバス」=
ルハンシク州とドネツィク州を含む地域を言っているのがほとんど。

ウクライナ人から見るウクライナ東部は、
東寄りの5つの州ーーハリキフ、ルハンシク、ドネツィク、
ドニプロペトロウシク、ザポリージャ州からなる。

現在「独立を求めたり」「建物が占拠されたり」しているのはドンバス。
それも、一部のみ。

ハリキフもたまに危うくなるけど、ドンバスにはまったく及ばない。
それには理由があるが、これについてはまた今度。

これに関連して最近耳にした勘違いをひとつ。

「ウクライナには親ロシア派と親欧米派が半々くらいいて...」
(これは、掛かり付けの整体院の先生。)

クリミア抜きでも、ウクライナには24つの州がある。
東部だけでも、2つの州からなるドンバスは少数派。
また後で話すけど、ドンバスでも「親ロシア派」は
決して大多数を閉めているわけではない。

「せやから勝手に半々にせんといて」と、
整体院の先生に突っ込みたいところだが、
日本の報道を見ていれば、
そういう誤解をしても無理がない。

あーーぽんずはストレスやー。

次回もお楽しみに。

2014年5月17日土曜日

よくある質問: 「あなたは、ヨーロッパ派? ロシア派?」

とにかくこれはよく聞かれる。

他のウクライナ人の知り合いからも、よく聞かれると聞く。

真っ先の反応は、「ウクライナ派」、である。
ロシアもヨーロッパも、あまり関係ない。

いや、その二つの間に板挟みになっているのはわかっているのだけど。



もともとは、どっちか片方を選ばなきゃならないのかよ、って思っていた。

去年の11月に始まった反政府抗議は確かに、EU連結協定の取りやめが原因だった。
その時点でわたしは懐疑的だった。「それでよかったかもじゃん」と思って。
ただ、11月30日、数百人のデモ隊に対して、警察が許せないほどの暴力を振るった。
それ以来、EU連結はともかくとして、「国民をなめんな!」というのが抗議の主な主張となった。

そこは、未だ日本で気づいてもらえていない気がする。




個人的にいえば、少し前までのロシアは、とりわけ好きでもなかったけど、別に嫌いでもなく。

ただ、自分はロシア人ではなく、ウクライナ人である、その認識だけはあった。

(血統的に言うと、ウクライナ人の血はたぶん入っていないとは思うけど。
 半分は朝鮮系、後はロシアとかポーランドとか、オーストリアとか、
 たぶん、ユダヤ系もどこか混じっているかと。)


なんだろう……被害妄想かもしれないけど、
一部のロシア人はウクライナ人に対してものすごく上から目線なのだ。
「ウクライナなんて国じゃない、地方だ」と言ったり。
「ウクライナ語はロシア語の方言にすぎない」と言ったり。

そう言われて快く思うわけあるまい。


ただでさえ、大国の人たちには「ウクライナ人です」って言っても、
気がつくと「ロシアだと、○○とかどうなの?」と聞かれるわけで。

「そのー、ロシアじゃなくてウクライナなんですけど。」
「えっ、何が違うの?」
「……国が?」
「うーん、よくわからない。」


 いやいや、わかってくださいよ、そこは。

「えっ、ロシアとウクライナって○○が違うの?」

ロシアの日常は経験したことないから比較もできないのよ、だから。


それはまぁ、いいとして。

とにかく、できることならロシアとは一緒になりたくなかった。
別物なのだから、感覚でしか言えないけど。
最近のロシアは、ロシア正教以外の宗教に対して迫害チックになったり、
同性愛者を犯罪者扱いしたりするし。
何かと面倒くさそう。


ヨーロッパはヨーロッパで、EUに加盟したら経済的にいろいろ大変そうである。

いちいちビザを取らなくてもいろんなところ行けるようになるから
EUになるといいなとは思っていたけど、日本でぐうたらしている自分が
ウクライナに残ったみんなにその大変さを背負わせる資格ないし。

できることなら、ロシアとも程よい距離を置き、
EUにも加盟せず、地味に存続してほしかったけど。

というか、政権が崩壊しても、暫定政権は真っ先に
「ロシアとの関係は友好関係のまま保ちたい」と確言していた記憶がある。

が、自力ではロシアに歯向かえないウクライナは、
結果として超スピードでヨーロッパに向かって走っている。
ここ3カ月でヨーロッパが自由貿易ゾーンを開いてくれたり、
資金を貸してくれたりして、来年までにはビザも排除されるかもしれない。


ヨーロッパ・アメリカは別に、ウクライナがかわいくて
いろいろ協力しているわけではないことくらいはわかっとる。

ウクライナなんて、でかい田舎のような、
経済的にも武力的にも力あまりないけど絶妙な位置にあるから、
どうしても大国に振り回されてしまう。

それが避けられないのであれば、
ロシアに拘束されるくらいなら、
ヨーロッパに付いた方が、マシ。





その選択を強いられるのはすごく悔しいけど。

みんなはただ、他人に干渉されんと、
自分の土地で平和に生きたいだけなのに、ね。


2014年5月15日木曜日

管理人について

どうもです。

日本在住のウクライナ人(♀)です。

以前は、「すももんちょ」というふざけた名前で
「ウクライナから愛を込めて」というブログをしたり、
「OREO。俺男」という更にふざけた名前でミクシィをしたり、
「カングさん」と言われてゆーちゅーぶでビデオブログをしたり、
他にもいくつかあるわけですが、とにかく、
ブログを作っては放棄するような人。

もう二度とブログを始めるまい、と思っていたのですが、
最近は母国の状況を見ていると、心が痛み、
頭の中で言葉がくっつき文ができる。
それを書きたくて、指先がかゆくなる。

ここでの名前は「ぽんず」にでもしときましょうか。
(知り合いにはすぐばれると思うけど。)


ここ1カ月ほど、テレビからの映像翻訳の依頼が殺到。
本来ならウハウハで嬉しいはずだが、内容が内容なだけに、
各依頼が重く体心に応える。

ここ1カ月で、テレビの報道力にがっかりした。
いや、イメージを植え付ける力は最強だとは思う。
でも、真実を見せてくれることには全く期待しなくなった。

制作側に悪意があるわけではない(と思いたい)が、ウクライナ人のくせに、
自ら作業に加わっておきながら、これでもかと思うくらいに、無力なのだ。

日本にいるとわからないと思うけど、ロシアが長年培ってきた
プロパガンダマジックに、客観性を誇る日本のマスコミも、
まんまと引っ掛かっている気がする。


自分で材料を選んで翻訳し、発信を試みた。
しかし、労力と時間を食われる割に、伝わる範囲はわずか。
それに、状況が複雑なだけに、よっぽど興味がなければ付いて行くのは大変。


だからたぶん、今の状況を正確に掴んでいただくことは、
ほぼ不可能なんじゃないのかな。



では、何ができるのだろう。


たぶん、
自分の心の内を晒して、
ウクライナ人を、人として見てもらうことしか、
できないのかも。


今の気持ちとしては、
「悲しみ」、
国から離れていても、
いや、
離れているからこそだろうか、
毎日の隅々まで染渡っている
悲しみ」がある。


「暫定政権」「制裁措置」「親ロシア派」
「迫撃砲」「装甲車」「地対空ミサイルシステム」

こんな日本語なんて覚えなくても済むような人生を送りたかった。


朝毎「何か、恐ろしいことが起きていないか」とネットを開く毎日には疲れた。



「オデッサ、46名死亡」と見ても「46人か~、きょうは多いな」としか思えなくなった自分には呆れる。



もう一つは、ロシアに対する
心の底からどす黒い煙を立てて湧きあがる
憎しみ」がある。


まともな人が聞けば「そこまでひどい嘘などつけるわけがない」としか思えないような
嘘を、それも嫌悪に満ちた言葉に包み発信しているロシアンプロパガンダや政治家たち。
日本ではその毒々しさがほとんど見向きされない。


特集を組んでいるテレビ局でも、ロシア報道番組の言葉をそのまま訳すと
「へ~、ウクライナ暫定政府を軍事政権って言ってんだぁ」と興味を示すくらいだが、
2か月前から"junta"「軍事政権」と言われ続けることによって、東部の人たちやロシア中が
暫定政権は非合法なもので軍事政権であることを信じ込んでいる。

たった一つの言葉でこのザマよ。

他の言葉も全て偽りで溢れているのに。


訴えても「自分に不都合な言い方されているから不機嫌になっているだけだろ」と思われる。

「ぽんずのヤツ、また何かイラついてやんの。」


無力なのに、疲れた。



一番近しい友だちがロシア人で。


いろいろ理解してくれロシアをかばったりすることはめったにないけど。


今、一番人に聞いてほしい「ロシアがこんなに悪いんだ!」という話は、
相手の祖国だから、できない。

本人がやったんじゃないんだから、怒りをぶつけても仕方がないし、
万が一反論されると、関係が壊れそうで怖い。


近しい友だちとも一線を置くようになり。
平和に生きる(ように見える)人たちに囲まれて
一人だけ影を背負っている自分にも飽きた。

いやな孤独感である。


悲しみ」「憎しみ」「孤独感

これくらいは、ウクライナ情勢の詳細がわからなくても、
わかってもらえるだろうか。



伝わ~れ~……。